傷だらけ

 

 

おかげさまでばんそうこうまみれ

 

 

他人の悪意のないナイフで傷をつけられても、なんともない振りをするために絆創膏で傷を隠すの。どんなに血が出てても「痛くないよ」って応急処置。ほんとは痛くて痛くてたまらなくても、笑って誤魔化す。「大丈夫です、ははは」

 

【社員だから】いろんなところに電話して謝って、頭下げて、お願いしますって。走り回って。

【年下だから】誰でも出来る雑用をこなして。重いもの持って走り回って。

【得意だから】そういうことは(本名)さんに任せて明日やってもらって。って言ってたから(本名)さんお願いね。って。説明書見たら誰でもできるよ。

 

「ごめんね」に対して「大丈夫です」と返すことしか知らない。他人に期待しないことを覚えた私は他人に頼ることを知らずにここまできてしまった。泣くなって言い聞かせて。こんなことで泣いちゃダメだろ。私はもう、【社会人なんだから】

 

この間、私が当たり前にやっていることで、みんなは誰がやってるかなんて知らないこと、をたまたま見られて、「担当なの?いつもありがとう」と言われてとてもあたたかい気持ちになった。「ありがとう」は魔法の言葉だって、知った。仕方なくやってた。私しかやる人がいないから。でもそれは誰も見てなくて、別に私がやらなくたっていいことで。そんなことに、感謝されるなんて思ってなかったから。きっと何気なく言った言葉だったと思うけど、それは私にとっては救いの一言、だった。

 

自分を守るために自分の心にバリアをはった。「大丈夫ですよ!気にしないでください!仕方ないですから!」「私がやりますよ!」

でも実際はバリアなんて意味無くて、自分で自分の心を裂いてたのかもしれない。自ら傷口に塩を塗って、ぼろぼろの足で立って、また笑って「大丈夫ですよ」って笑うんだ。

 

ぼろぼろの手を伸ばした先の赤い光は、強く輝いてて、「 届かない 」。私の両手をぎゅう、と握りしめて私の名を呼んで笑った。彼は何も知らないくせに、私の心を見透かして、強く抱き締めた。

 

何も知らないのに、全部知ってるみたいな顔して。

 

 

今日もどこかで笑っていて。私の愛しい赤い光。

 

あなたが笑うだけで私は

 



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